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Shiggy Jr.『LISTEN TO THE MUSIC』レビュー/自覚的なポップスを聴くべし。

見ればわかる通り、久しぶりにブログを書いているのですが、それは何故かと言われれば、今週7月16日に発売された4人組ポップバンド、Shiggy Jr.(シギージュニア)の2nd EP『LISTEN TO THE MUSIC』が、そしてこのShiggy Jr.というバンドが最高すぎて筆舌に尽くせないけれど、何か言葉にしなくてはいけない気がしているからに他ならないのです。

 

 

Shiggy Jr.は2012年12月に結成したばかりのインディーズバンドだ。去年11月に発売された1st EP『Shiggy Jr. is not a child.』のリード曲、「Saturday night to Sunday morning」がポップスリスナーたちのツボに突き刺さり、一気にインディーポップシーンのホットトピックとなったのは音楽好きには記憶に新しい。

 

 

そんな彼らが満を持してリリースした2nd EP『LISTEN TO THE MUSIC』は、ポップスであることに自覚的な、だからこそ今聴くべき1枚となっている。 前作『Shiggy Jr. is not a child.』は生のバンドサウンドが印象的な、ワンルームで友人とホームパーティをしているような温かさの感じられる作品であったが、そんな前作に対し、本作はワンルームの壁も屋根も吹き飛ばして、大空へと舞い上がっていくような広がりのあるものとなった。

 

そもそも『LISTEN TO THE MUSIC』というタイトルからして、ミュージシャンとして唯一無二のメッセージであり、ポップスと呼ばれる音楽に求められる大衆性と真っ向と相対しよう、全世界に届けようという覚悟、俗な言葉を使えば、売れようとする気合いが感じられる。サウンドについても打ち込みを多用し、ビートが響く、現在の音楽シーンのトレンドど真ん中のディスコミュージックとなっている。

 

 

個々の楽曲においても、キラキラしたシンセとボーカルのユニゾンから始まるエレクトロな表題曲、ボコーダーの効いたコーラスが印象的な「Summer Time」、曲名とは正反対に、高速BPMに載せて初めから終わりまでハイテンションな「Oyasumi」など1stからのファンを一瞬驚かせるような、「今のフロア」を捉えた曲が印象的だ。それでも、聴くにつれてどれもShiggy Jr.的としか言いようのないポップスになっているのはなぜなのだろうか。

 

それは、シーンや音楽に対する絶妙な「距離感」なのではないだろうか。レジーのブログでのインタビューで、作詞作曲をしている原田茂幸が

ディスコっぽい音楽の流れが来てるのは何となく感じてたんですよ。それこそダフトパンクの“Get Lucky”とか。自分自身ミーハーなので(笑)、その流れに逆らわず乗ってみようというか

 

と語っているように、現在のトレンドに自覚的に乗っていく、というスタンスからそれは感じられる。またボーカル池田智子も、萌えポップソングのカテゴリに入れられかねない甘い声ながら、歌唱は楽曲のテンションに呑まれることないフラットなものであり、やはり絶妙な距離感を保っている。

この距離感は本作全体を通して感じられるが、最も効果的に機能しているのが「Baby I Love You」であり、「I Love You」というストレートなメッセージを、メロウでけだるいサウンドに、丁寧に重なるコーラスで聴かせるこの曲は本作のハイライトとなっている。

 

よりたくさんの人に聴いてもらうために、現在のシーンのトレンドを積極的に取り入れながら、それに取り込まれることなく、冷静に距離感を保ち自分たちの音楽を作る。それこそが本作でShiggy Jr.がやっていることであり、それはまさに大衆音楽=ポップスとしての本質ではないだろうか。

本作『LISTEN TO THE MUSIC』は10年後聴いても名盤だろう。しかし、今を取り込むポップスだからこそ、今、リアルタイムに聴かれるべき1枚なのだ。