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平成生まれのためのサザンオールスターズ論 その2安定期『綺麗』~『KAMAKURA』

サザン特集3記事目です。

過去記事

平成生まれのためのサザンオールスターズ論 その1-A衝撃、かつ戦略的デビュー

平成生まれのためのサザンオールスターズ論 その1-B楽曲編『熱い胸騒ぎ』~『NUDE MAN』

 

さすがに前回書いて自分でも長すぎると思いました。笑

好きなものを話していると長くなってしまいますね。と、いうことで、今回はもう少し短くまとめられたらと思っております。

 

と、いうことで今回の話は1983年に発売した、6枚目のアルバム、『綺麗』から再開します。このアルバム以降、いわゆる「打ち込み」が使われていきます。シンセサイザーなどの電子楽器が広まってきて、それがレコーディングやライブに使われてきたわけです。また、「いとしのエリー」がドラマ「ふぞろいの林檎たち」の主題歌になり、以降タイアップが増えていくことなどからも、デビューから5年が経ち、キャリア的にも、技術的にも学生バンド的なものからまさに「日本を代表するバンド」に変わったタイミングがこのあたりだと考えられます。

 

・6thアルバム『綺麗』

打ち込みが使われるようになった、という意味では、より現在の曲作りや音が近くなっているとも言えますが、その分、技術的な未熟さを感じてしまうのも事実であり、音質的に「パワー不足」を感じてしまう一枚。音楽性もAOR(Adult-Oriented Rock、大人向けのロック)的であり、サザン=盛り上がる曲、というイメージが強い人にはちょっと楽しみづらいアルバムかも。でも、その分サザンの音楽の多様性にも気づける1枚。ミュージシャン仲間である山下達郎の影響を受けたような(つまりはビーチボーイズ的な)コーラスワークが映える曲(#7)やライブでの特殊効果込みの演出が合う曲(#1)などその後のサザンの得意技の初期曲が聴けるという意味では面白い。

※個人的おすすめ曲

#13EMANON #14旅姿六人衆

 

・7thアルバム『人気者で行こう』

前作からのAOR要素は続いているが、それをバンドとしてうまく消化したのか、大衆性も同時に獲得している名盤。とにかく名曲揃い。シンセのメロディが今も色あせない#3、エモーショナルなホーンセクションが甘酸っぱい#8などまさにエバーグリーンな曲と、ベースがシビれる#2、ファンクなメロと疾走感溢れるサビの組合わせが癖になる#12などいわゆる「変態曲」が絶妙に同居するアルバムになっている。本当にこれ名盤なんで、おすすめです。

※個人的おすすめ曲

#2よどみ萎え、枯れて舞え #3ミス・ブランニュー・デイ #8夕方Hold On Me

 

・8thアルバム『KAMAKURA』

鎌倉、というサザンにゆかりの深い地名のタイトル、2枚組のボリューム、150万枚以上の売り上げ、そしてこのアルバム発売後に原の産休のため活動休止、ということで前期サザンの集大成、という捉え方をされがちなこのアルバム。しかし、シングル曲は2曲のみで、アルバム曲は実験的な曲が多く、かなり当時にしては攻めた、尖ったアルバムであったのでは、と考えられる。しかし、それだけ当時のサザンが「先頭を走ろうとするバンド」であり、それをリスナーも求めていたのではないだろうか。レゲエ的なリズムを打ち込みでやるという今でも前衛的すぎるアプローチの②-#1、下ネタ歌詞を英語風に歌う、という得意技を重厚なサウンドに載せた②-#3など、多様な音楽ジャンル、打ち込み、桑田的とした形容できない歌唱、歌謡曲的なキャッチーなメロディが複雑に絡み合った、邦楽界の歴史に残るのも納得の1枚。

※個人的おすすめ曲

①-10鎌倉物語 ②-1顔 ②-10悲しみはメリーゴーランド

 

この後、1年程の休止期間の間、サザンは活動を休止します。その間に桑田はKUWATA BANDという別のバンド活動を1年限定で行います。そして、1986年、シングル「みんなのうた」で活動再開、となります。 この時期のサザンは、全体のキャリアからすると安定期、とでもいうべき時期でしょうか。紅白の出場を辞め、ソロでの年越しライブを始めたり、海外レコーディングを行ったり、「KAMAKURA」制作時にメンバー間の不仲が問題になったり、いろいろ変化はあったようですが、音楽面では、前述したような、ロックに限らないたくさんの音楽ジャンルをその時代の空気感になじむようにアレンジすることで大衆性を獲得する、というサザンの最も強力な武器を確固たるものにしていった時期であると言えます。ある意味、その後のサザンの作る曲はこの時期に発表された曲たちのアップデート版のようなものかもしれません。 これ以降、少しずつサザンというバンドが苦しみながら、進んでいくのですが、これから先はまた次回で。